TOXIC ―不適合な奴等―
 この街、ストーレルは地球に於いては珍しい、地上にある街だ。

 規模も思いの他大きく、宇宙港や南の外れには、少しばかり肥沃(ヒヨク)な土地柄を利用した緑地帯農園まである。

 街の中央付近にはトラム(路面電車)の走る、石畳の街。


 その目抜き通りをダラダラ行くハメネイは、昼前の少しばかり活気づく街並を、吊ってんだか垂れてんだかわからない、やる気の無い眼で楽しんでいた。

 ガキの頃から変わらない街並と喧騒は、ハメネイのお気に入りの一つだ。

 人付き合いが良い方では無いが、この街の人達の人柄と、やたらに祭り好きな所は正直、心地良い。


「おうハメネイ、今お目覚めかい?」


 軽快に声を掛けてきたのは五十前後の、半ば禿げ上がった恰幅の良いエプロン姿の男。


「よう、セグゼナのおっさん。そんなとこ。…どうよ? 景気は」


「ああん? 良いように見えんのか?」


 セグゼナと呼ばれたオヤジが居るのは、通りに面して開けた、食品店のようだ。
 見た所、お客は一人も居ない。

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