雑草だから笑う。
仕事が終わって家に着くと鼻水出してしゃくりあげて泣きまくった。


現実から逃げたかった。


でも次の日になれば顔が半分動かない自分が鏡の中にいた。

次の日もまた次の日も。

いくら逃げたくても無理だった。






そして私は現実と向き合おうと決めた。







何が一番辛いって人前で笑えないこと。

いや、自分では笑っているつもりなんだけど顔は引き攣ってる。

仕事のときは表情が出せないし、左の口が動かないから常にマスク。
外に出るときもマスクか帽子を被って。

「ぱ行」と「ま行」がうまく言えない。

仕事中も何度か聞き返されたり。

家族以外の人の前では物を食べることができない。
ポロポロ落としてしまい汚いから。

ペットボトルのジュースも飲めない。
コップかストローで少しずつ。

舌の左半分が全く味覚を感じることが出来ない。

左の耳で電話を取ると全て「グァングァン」としか聞こえない。
耳が痛くなる。

寝ているときは、目を閉じてるつもりでも左側は完全に閉じることが出来ず、ちょっと白目が見えるらしいので、目が乾くから眼帯をして寝る。

お風呂は左目をテープで止めて。

とにかく首から上の左半分が全て機能しなくなった。


 いつまでも治らないので、母や周りの人達が心配してくれて大きな病院で脳をみてもらったらどうか?と言われ、隣の県の脳神経で有名な病院で検査をしたが異常なし。


結局、週に二回通院をし、完全に治るまで半年以上かかった。


いまだに何となく怖くて電話は右の耳でとっている。

寒い日の朝は左の顔の動きが鈍いような気がする。
きっと考えすぎなんだろうけど。




もうそろそろ顔面麻痺も治るだろうという頃、私の疲れはピークに達していた。

前ほどうまく店で笑うことが出来なくなっていた。


それは母も同じだった。


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