雑草だから笑う。
高梨が父がいなくなったことを早速みんなに言ったからだった。


しかもうちの仕事の取引先にまで連絡したらしく業者なんかもいた。

うちみたいな小さな市、話が広がるのは早かった。



その時、ただなんとなく

「お父さんが生きていてもこんなに噂になってるんじゃ帰りたくても帰って来れないんじゃないか」と、思ったのを覚えてる。


高梨が流した話というのは私達のせいで父がいなくなったというものだった。





私はその日の夕方にバイトの面接だった。



面接場所まで電車で一時間かかるし、行くべきか行かないべきか迷っていた。

母と兄は父がいつ見つかるか分からないんだから行ったほうがいいと言った。


叔父達には相談できない。

そんなことを言ったら「こんな時に行くなんて」と散々ひどいことを言われるのは分かっていたから。


母のとても信頼している友人に相談してみた。

この方はうちの事情を全て知っていて精神的に辛いときに支えになってくれた人。

その方も「面接に行くべきだ」と言った。

ただし叔父達にそれを知られたら大変な騒ぎになる。

だから彼氏と探しに出掛けたみたいにして言った方がいいと。



私は、片道一時間かけて面接へ行くことにした。





面接が終わったのは夕方の五時半になるくらいだった。




終わった後、すぐに駅に行き、電車に乗ろうとすると携帯が鳴った。兄だった。







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