precious one
「なんだよ? 愛花は、俺と二人じゃ嫌なわけ?」
「いや、違くてっ…」
テンパりすぎて、上手く言葉にならなくて。
パニクるあたしに、稔太の表情は険しくなるばかり。
「愛花はさ、渋谷と二人なのが恥ずかしいんだよね?」
その時、
未矢がフォローするように言った。
「恥ずかしい?」
稔太は不思議そうに、未矢の言葉に首を傾げた。
「愛花はずっと、渋谷のこと好きだったから、彼氏っていう存在に、まだ慣れてないんだよ。
だから、二人だと緊張しちゃうんだよね」
「そうなの、愛花?」
稔太の問いかけに、あたしは何度も頷いた。
稔太はずっと友達だったから。
“彼氏”っていう響きに、まだ少し戸惑ってる。