precious one
稔太とおばあちゃんについて上がった場所は、
畳の敷かれた古風な部屋だった。
「愛花ちゃんって言ったっけ? 私は稔太の祖母です」
「あっ…井上愛花っていいますっ」
「そんな緊張しなくていいよ」
おばあちゃんは、ずっと笑ってた。
その顔は本当に優しくて。
なんだか心が落ち着いた。
「稔太は毎日のように、愛花ちゃんの話してたんだよ。今度ばーちゃんにも、会わせてあげるからって言ってね。
だから会えて嬉しいよ」
その言葉に、あたしは恥ずかしくなると同時に、
すごく嬉しかった。
おばあちゃんがあたしと会って、喜んでくれてること。
稔太が、あたしの話をしてくれたこと。