precious one
「稔太が彼女に会わせてくれたのは、初めてだね。今までは、嫌だーなんて言ってね」
「うるさいなー、ばーちゃんは」
おばあちゃんの言葉で、今まで稔太に彼女がいたことを、初めて知った。
少し暗くなるあたしに。
「会わせてくれたってことは、愛花ちゃんは今までの子とは違うんだね」
その言葉に、稔太は照れくさそうに笑った。
あたしは、胸が締め付けられた。
感情が、一気に込み上げた。
あたしの気持ちを表すかのように、
突然雨が降り出した。
「あらあら。急に降ってきたねぇ。洗濯物干しっぱなしだわ」
「ばーちゃん、俺入れてくるよ」
「じゃあお願いね」
稔太は立ち上がって、ベランダへと走っていった。