precious one
そこには、あたしとおばあちゃんの二人だけになった。
「愛花ちゃん」
「はい」
急に呼ばれて、あたしはおばあちゃんを見た。
「あの子、両親がいないでしょう? 兄弟もいなくて、家族と言えば私だけでね。
ずっと寂しい思いさせてきたと思う」
おばあちゃんは、目を伏せて、悲しそうな表情で話す。
「強がりなところがあるけど、本当は誰よりも弱いの、稔太は。
だから愛花ちゃんが、あの子を守ってあげて?」
あたしは、小さく頷いた。
するとおばあちゃんも、満足げに頷いた。
「愛花ちゃんと付き合いだしてから、あの子すごく幸せそうなの。
本当に愛花ちゃんのことが、好きみたいね」
そう言われて、あたしの顔は赤くなってしまった。
ねぇ、稔太?
あたしがずっと、稔太のこと守るよ?
ずっとずっと、稔太のそばにいるよ?