precious one


そこには、あたしとおばあちゃんの二人だけになった。


「愛花ちゃん」

「はい」


急に呼ばれて、あたしはおばあちゃんを見た。


「あの子、両親がいないでしょう? 兄弟もいなくて、家族と言えば私だけでね。
ずっと寂しい思いさせてきたと思う」


おばあちゃんは、目を伏せて、悲しそうな表情で話す。


「強がりなところがあるけど、本当は誰よりも弱いの、稔太は。
だから愛花ちゃんが、あの子を守ってあげて?」


あたしは、小さく頷いた。

するとおばあちゃんも、満足げに頷いた。


「愛花ちゃんと付き合いだしてから、あの子すごく幸せそうなの。
本当に愛花ちゃんのことが、好きみたいね」


そう言われて、あたしの顔は赤くなってしまった。


ねぇ、稔太?

あたしがずっと、稔太のこと守るよ?

ずっとずっと、稔太のそばにいるよ?




< 27 / 61 >

この作品をシェア

pagetop