precious one
そして、稔太は言った。
「俺、人生なんて、どうでもいいと思ってた。愛されない俺は、生まれた意味なんてないと思ってた」
そんな悲しいこと、稔太の口から聞きたくないよ…
生まれた意味がないなんて、そんなこと思ってほしくない。
溢れ出した涙を必死に拭っていると。
「でもな、愛花と出会って変わった」
「え?」
稔太の言葉に、あたしはびっくりして顔をあげた。
すると、さっきまでのつらそうな顔じゃなくて。
優しく、笑ってた。
「愛花を好きって気付いた時、俺は初めて生きる意味ができた。
俺は愛花のそばにいるために、生まれてきたんだって思った」
まっすぐあたしを見つめる稔太の瞳に、胸が締め付けられた。
さっきとは違う涙が、あたしの頬を伝う。