precious one
稔太は指でそっと、あたしの涙を拭った。
そしてそのまま、頬に手を当てた。
「俺、愛花がすっげー好き」
その言葉だけで、あたしはどこまでもいけるよ。
胸が苦しくて。
稔太がすごく、愛しくなった。
あたしがこの人を、一生愛してあげよう。
そう心で誓った。
涙でぐちゃぐちゃのあたしの顔を、稔太はそっと見つめる。
こんな変な顔、見られたくないけど。
あたしも稔太から、視線を外せなかった。
少しずつ近付く、稔太の顔。
あたしの鼓動は、次第に速くなって。
それを隠すかのように、目を伏せた。
あと数センチの距離で目を閉じると、
すぐに唇に温もりを感じた。
その瞬間、時が止まったような感覚になった。
きっと、触れ合ってた時間は、数秒だと思う。
けれどあたしには、長く思えた。