precious one
稔太は、悪気のない顔で、筒本を見る。
そして。
「俺の彼女、いじめないでくれる?」
ポーカーフェイスを崩さずに、筒本に言い放った。
その言葉に、少し恥ずかしくなる。
「別にいじめてねーよ」
「“道連れ女”って言っただろ、さっき」
「だってそれはほんとじゃんか……いってっ」
反省の様子のない筒本に、稔太はもう一発。
心なしか、筒本は少し涙ぐんでた。
「愛花いじめんな、バカ」
「何だよ、稔太、お前彼女バカすぎんだよ」
「うるせーよ。
心配しなくても、お前は絶対当たり引いてたから。
どっちみち参加してただろうし。
俺たちが一緒で、良かっただろ?」
「ひでーな、おい!」
筒本に言い放った稔太は、
そのままあたしの手を引いた。
稔太に引っ張られるまま歩くと、
だんだん筒本の姿が遠くなっていった。