precious one
利香と稔太は、仲悪いわけじゃないけど、
どっちかと言えば喧嘩友達だ。
利香は気が強くて、稔太はお調子者で。
そんな二人は、何かと対立する。
「俺は眠いんですー。森崎と違って、いいことしてるからね」
「ばーちゃんの手伝いでしょうが。それぐらい当たり前だから」
「じゃあお前、母ちゃんの手伝いしてんのかよ」
「してるよ、たまに」
「たまにってなんだよ。するなら毎日しろ」
「何威張ってんのよ。渋谷のくせに」
「渋谷のくせに、ってどういう意味だよ」
「別に意味はないけど?」
休む間もなく、言い争う二人。
これがほぼ毎日だから、いい加減慣れてる。
けれど。
「森崎と渋谷。お前らうるさい」
あたしたちの前に座る先生が、眉間にシワを寄せて怒った。