precious one
「森崎」
「何してんの? こんなとこで」
「んー。暇だったからぶらついてただけ」
稔太に話しかける利香。
そんな利香を、睨みつけるように見てる里世。
利香は、知らないフリしてひたすら稔太と話していた。
そして、里世の視線があたしに向いた時。
「愛花」
稔太の声がして、顔を向けた。
手招きされて、あたしは稔太の前に立った。
「これからどっか行くの?」
「んーん? とりあえず部屋から出ただけだよ」
里世の視線が痛かったけど、別に気にならなかった。
稔太が目の前にいたから。
「じゃあ、一緒にいよ」
そう言って、あたしの手を引く稔太。
「えっ、ちょっ、稔太っ?」
稔太に引っ張られながらも振り返ると、
あたしを睨みつける里世がいた。
あたしはなんだか、怖くてたまらなかった。