precious one


涙を必死に拭うあたしは、

気付けば稔太の腕の中にいた。


「俺のこと、好きなのか?」


微かに聞こえた声に、あたしは小さく頷いた。


「じゃあさ、俺の彼女になってくれる?」


その言葉に、泣くことしかできなくなった。

稔太の腕の温もりに、優しさに、

愛しさが増した。

稔太が好きで好きで、たまらなくなった。


「俺も、井上が好きだから」


そう呟いた言葉が、今でも頭から離れない。

何年経っても、色褪せることなく、あたしの記憶に残ってる。


大好きな稔太からの、初めての愛の言葉。




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