precious one
「俺、お前にちゃんと話さなきゃいけないことあるんだよな」
「話さなきゃいけないこと?」
「うん」
キョトンとして稔太を見たけれど、
稔太の表情はいつもと変わらなかった。
上を見ながら、何かを探すような顔をして。
話をするときの、稔太の癖だ。
「大したことじゃないんだけどさ」
「え、何? 気になるんだけど」
一向に話そうとしない稔太に、少し焦ったように話を促した。
じらされると、余計気になる。
「んー…やっぱいいや」
「えぇ?」
こんだけじらしといて。
結局いいやって…
「今はとりあえず、お前と2人でいれたらいいから」
そう言って、いたずらに笑った。
稔太が笑うと、あたしも自然と笑顔になれる。