チャリパイ12
~資産家令嬢殺人事件~
密室殺人でも何でもなかったのだ。
オートロックのドアならば、犯人が美佳を殺した後に部屋のドアから出ていけば、閉まったドアに鍵が掛かるのは当然の事である。
「しかし、オートロックのドアって事は、美佳さんは犯人を何の疑いも無くごく普通に部屋の中へ入れてしまったという事になる……つまり、犯人は美佳さんの顔見知りの人間だって事だ」
シチローが鋭い所を指摘した。
そんなシチローに周りの者が感心しているのを見ると、松田も負けてはいられないと鑑識を煽り立てる。
「おい!何か有効な手掛かりは見つかったのか!」
「え~~…死因は胸部をナイフで刺された事による『失血死』…」
「そんなこたぁ~見れば解るよっ!」
「死亡推定時刻は、遺体の血液の凝固状態などから、今から三時間ほど前の午後八時前後と思われます!」
「他には!」
「はい……残念ながら部屋には犯人の指紋と思われる物は発見出来ませんでした……凶器の指紋もきれいに拭き取られています」
「なんだよ…たいした手掛かりにはならんな…」
松田は、つまらなそうに口を尖らせて呟いた。
鑑識の男は、ギロリと
松田に睨まれて肩をすぼませて下を向いてしまった。
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