チャリパイ12
~資産家令嬢殺人事件~
「って事は……四人ともアリバイがあるって訳か……捜査はふりだしに戻ったな……」
皮肉にも、容疑者のそれぞれが別の容疑者のアリバイを証明する形となってしまった。
すっかり、この中に犯人がいると思い込んでいた松田刑事は、眉をしかめて頭をくしゃくしゃて掻いていた。
「他に誰かいないかな?素行の怪しかった奴とか……」
その時。
「そういえば!」
突然、馬場が素っ頓狂な声を張り上げた。
「どうしたの?馬場さん、急にそんな声だして?」
「あの時間、庭で若い女が走って帰って行くのを見たぞ!」
「若い女?」
馬場の話に松田とチャリパイの四人は、興味たっぷりに食いついた。
「誰なの?その若い女って!」
「いや…誰って、名前までは……確か、美佳ちゃんの友達じゃなかったかな……」
馬場の話では、犯行のあった午後八時頃、岡崎夫人と庭で逢い引きをしていた時に、ちょうど大学生位の若い女がひとり
屋敷から出て来て、何やらソワソワした様子で外へと出て行ったと言うのだ。
「暗くてはっきりとは判らないですけど……あれは確か美佳のお友達の『小島みどり』さんだったと思いますわ…」
そう呟いたのは、その時刻、馬場と一緒に庭にいた岡崎夫人であった。
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