チャリパイ12
~資産家令嬢殺人事件~
おトキさんが警察に電話をしてから、30分位が経過しただろうか。
岡崎邸の庭の周りが、
にわかに騒がしくなってきた。
「ん?何かサイレンみたいな音が聴こえるな……」
その音は次第に大きくなり、ついには屋敷のすぐそばで聴こえるようになった。
くるくると回る赤色灯の光が、窓ガラスを通してパーティー会場へと差し込む。
「おいおい!こっちへ入って来たぞ!」
事情も解らず、ざわめき立つ招待客。
やがて、入口のドアが開くと、1人の刑事が数人の鑑識班を引き連れて、招待客の前に姿を現した。
「どうも皆さん、お騒がせしてすいません。
私、『花曲署』捜査一課の松田という者です!
いつもチノパンを履いているので、通称『チノパン刑事』と呼ばれています♪」
そんな自己紹介をすると、松田刑事は掛けていたサングラスを外し、ジャケットのポケットから出した警察手帳をひらひらと提示する。
そして、辺りをキョロキョロと見回して言った。
「あれっ?岡崎さんってどの人です?」
「っていうか、刑事さんが一体何の用なんですか?」
「何の用って……知らないの?
ここの娘がさっき、何者かに殺されたんだよ」
松田刑事があまりにも
簡単に言うもんだから、招待客がその内容を理解するのには少しの間があった。
「なんだって!!
この屋敷で殺人事件がっ!」
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