慟哭



「だいちゃんは歳も近いからよくケンカしたし…でもしんちゃんはなんだかんだ言っても最後には優しいから」



 私がそう言うとびっくりした顔をして、しんちゃんが私を見た。



 なんかヘンなこと言ったかな。



 しんちゃんは顔を背けて運転席の窓の方を向いて、タバコを消しながらまたまた大きなため息をついた。



 だいちゃんは、私のひとつ年下。



 ほんとに活発でやんちゃな子。



 よくケンカしたし、意地悪もされた。でも一番の遊び相手でもあった。まあ、それも小さい頃の話だけど。



 中学に入ってからは、あまり話さなくなった。



 だいちゃんはサッカー部に入ってて忙しいし、学年がちがうからか、あまり顔を合わさない。



「おまえさ…大吾と最近話したか?」 



 しんちゃんも同じこと考えてたんだ。



「ううん、もう何日も話してないよ。サッカー部は朝早いし帰りも遅いからねー」



 私がそう言っても、しんちゃんはなにも返事してくれずに、またタバコに火をつけた。



 私は小さいとき、っても小学校にあがるころには治ってたけど、喘息だった。



 しんちゃんは覚えてるのかな。



 すごく器用に煙を外へ出していて、車内には入ってこない。



 外へ流れていく煙を、しんちゃん越しに見つめてた。



「利香」



 …びっくりした。急に振り返るから。



 ものすごく低い、聞いたことない声で呼ばれた…



「いいか、泣く程のことがあるなら…」



 あるなら?なに?



 しんちゃんが先を言わない。



 真剣な顔して黙ったまま。



 …続きがこわい。なんだろ〜また怒られるっ?



「しんちゃ」
「俺のそばにいろ」



 ………は?



「俺はお前を泣かせない。お前がいつも笑っていられるようにしてやる。だから俺のそばにいろ」



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