慟哭



「あ〜うらやましいよね。いつかアタシも彼氏とクリスマス過ごした〜いっ」



 反対側のとなりにいた、沙絵(さえ)が言う。



「ねーーっ」



 声とテンションを合わせ、頷き合う。



 ねーっ



 なんていいつつ…



 私は今、



 窮地ってやつに追い込まれている。



 さかのぼるのは一週間ちょっと前。



 私は大失恋をした。



 一度だけ、ほんの一瞬会っただけで、自分で自覚のないまま好きになっていた人。



 でもその人には



 奥さんも子供もいた。



 人を好きになり、失恋し、



 この気持ちは恋なんだと気付かされた。



 失恋して初めて自分の気持ちに気付くって…まぁ、自分でもそれってどうかと思うけど。



 家族で仲良く歩く姿をみた時は、気持ちのセーブがきかず、お店のなかに居たにもかかわらず泣きまくった。



 その帰り道に、幼なじみのお兄ちゃんに半ば命令のように「そばにいろ」と告られて。



 おまけに今日出掛けるときに家の前で会った、というか待ち伏せしていたしんちゃんに「帰ったら来い」と言われ…



 はぁぁぁ…



 なにがなんだか、もうわけがわからない。



 車に拉致られたあの時のしんちゃんは、とても真剣で、からかわれてるとはとても思えなかったけど。



 だからといって、しんちゃんが私のことを好きだとは…とても思えなくて。



 だっていくら二軒挟んでお隣りの幼なじみだけど、



 しんちゃんは14歳の私より5歳も年上で、早生まれだから学年は6学年上。


 私が小学校に入学した時にはもう中学生で。



 私が中学校に入学した時には大学生になった。



 いつもしんちゃんは先へ先へと進んでいて、



 だいちゃんと遊んでるときにいじめられた私をかばってくれたけど…



 だからって特別優しいわけではなかったような…



 どっちかっていうと、いつまでも泣かしとくとうるさいから、仕方なくというか…



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