慟哭
1 出会い
夏休みの公園は子供たちのはしゃいだ声でにぎわしい。
噴水が暑さを少し紛らわせてくれるけど、それも気休め。
今日も死ぬほど暑い。
私は友達の里美と公園内にある、図書館にいた。
私、松岡 利香(リカ)、14歳、中学2年生。陸上部所属(夏期のみ水泳部も)、彼氏ナシ。
恋愛事にはトンと疎い私はまだ誰とも付き合ったこともなければ、好きな人もいない。
部活に行くか、図書館に行くか(もちろん里美と)遊びに出かける(これも…以下同文)くらいしかない。
でも、里美は私とは違う。
私と里美は図書館の一番奥、事典のような分厚い本ばかりが並ぶ、人気の少ないところでひそひそと話し込んでいた。
図書館にいるからといって勉強なんかするわけはなく、口を開けば女子の定番、恋バナ。
「ところでさ、利香にお願いがあるんだけど」
「……なに?妙にいやな予感がするのは私だけ?」
里美の表情からして、いいたいことの8割は読めた。
「お願い、先輩は休みが少ないからこんなチャンスは滅多とないの!」
必死だなあ。恋するとこんなに必死になれるんだろうか。
「…で、いつ?里美はうちにお泊りすることにするの?」
「利香ありがとう!18日」
「18日ね…次の日も夜まで、だよね」
「さすが利香りんりん♪」
「鈴かっ!りんりん言うなっ」
アリバイ工作なんて私には当分ないことだろう、と心で呟きつつ、うれしそうな里美の顔をぼーっと見ていた。
我が家は門限9時の外泊禁止、お泊り先が女友達の家でも例外ではない。そのかわり来てくれるのは誰でも何人でもOKという両親のもと育ってきている。
この夏は部活の友達やその友達など、連なりが連なって、一晩に11人も泊りに来た。
夏だから雑魚寝でいいし、楽しかったけど。
里美は今までもよく来ているし、里美の親も安心して送り出すだろう。
「どこに泊まるの?てか、どこ行くの?」