慟哭



 一人になって、歩調はますます遅くて…



 ここからなら、とっとと歩けば5分で家に着くはずの距離。



 馨たちと別れてどれくらい経ったかな…



 駅の近くだからお店もたくさんあって明るいし、なんたってクリスマス。



 まだ8時をちょっと過ぎたばかりのこの時間は、かなり賑わっている。



 クリスマスにこんなどよーんとした私って…



 夜道を一人で歩くことの怖さはないものの、淋しさはこの上ない。



 まわりはラブラブ、イルミネーションで街ごとキラキラ。



 ああ、いつもは普通の街路樹も今日はキレイだなぁ…



 とうとう足を止めて、ボーっと街路樹を見上げた。



 「なんでこんなとこ突っ立ってんだ、お前」



 …………



 見上げた首をそのまま声のほうに180°回転すると。



 しんちゃんが後ろにいた。



「…キレイじゃない?」



 そろそろ首が痛いな。



 「ちっとも帰って来ねえから見に来てみれば…」



 ひょっとして心配して来てくれたのかな。



 口は果てしなく悪いけど、いつも心配してくれて優しいしんちゃん。



「…ごめんね」



 しんちゃんはどうして私が好きなんだろう。






 ∞∞∞∞∞∞∞






 すごく真剣な顔をして「大事にするから」と言うしんちゃん。



 好きとか言われたわけじゃないけど、しんちゃんの気持ちは痛いほど伝わってきた。



 顔を間近に捕らえられたまま、私は言った。



 真剣なしんちゃんに対して、適当なことは言えないから。



 嘘をつかないで、本当のことを伝えた。




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