慟哭
もう、車に乗っているのがつらくて…
「ごめんね…もう行く」
しんちゃんの車を降りた。
二、三歩進んだところで、バタンッと車のドアが閉まる音がして、振り向くとしんちゃんが車を降りていた。
こっちに向かってくる。
すぐに私に追い付いてきたしんちゃんは、いつもの俺様に戻ってた。
「クリスマス、開けとけ」
「はぁっ?」
「聞こえただろうが。わかったな」
…なっ?!
「まっ、待ってしんちゃんっ、あたしクリスマスはクラスの子達とパーティーするん」
「じゃそのあとだ。いいな」
…どーゆーことっ…
しんちゃんはスタスタと行ってしまった。
呆然とする私をよそに、また車に乗って、すぐに私の横を通り過ぎた。
あまりの俺様ぐあいに、涙も引っ込んでしまった。
∞∞∞∞∞∞∞
イルミネーションを見上げていた私に声をかけてくれたしんちゃんを見上げながら、ぼんやり思った。
今日は早く帰ってきたのかな。
あの車で話した日以降、しんちゃん家にはいつもしんちゃんの車は無くて、会うことができなかった。
しんちゃんは、私を迎えに来てくれたのかな。
車じゃなく歩いて迎えに来てくれたのかな。
「お前メシは」
…いつもながら愛想のない話し方だけど、これがしんちゃん。
「パーティーでみんなと食べたよ。しんちゃんは?」
「…俺はいい。で、お前は門限何時だっけ?」
「10時だけど…どこか行くの?」
10時までにはもう1時間と少ししかない。
「来い」
どこへ行くとも言わないで…背中を向けてさっさと先に行ってしまう。
しんちゃんの背中は遠い。
背が高いからだけじゃなくて。
何を言っても届かない。
聞いても答えてもらえない。
しんちゃんは私には遠い人だ。