慟哭
6 真実と嘘
向かってる方向には、私たちの家がある。
てことはしんちゃん家に行くのかな?
しんちゃん家は久しぶりだからちょっと緊張…するかも。
おばさんには昨日も会ったばかりだけど、おじさんにはしばらく会ってないし…
だいちゃんはいるだろうな。こんな時間まで部活ないから。
なんて考えてたらあっという間に着いた。
「乗れよ」
…車でどこかへ行くんだ。
一時間くらいしかないのにどこに行くんだろう…
正直、車に乗りたくなかった。
この車…しんちゃんの車には。
この前のことを思い出すから。
ショッピングモールであの男の人を見てショックだったこと
しんちゃんからの告白
大泣きしたこと
どれもできるなら消してしまいたい。
「どこいくの?」
行き先もわからずに乗りたくなかった。
「いいから乗れ」
いい加減あったまきた。
「やだ」
私がそう言ったら、しんちゃんのこめかみのあたりからブチッて音が聞こえてきそうなくらい、不機嫌な顔になった。
「…いいから乗れってんだろ」
…ちょっとこわい
しんちゃんは怒ると、とてつもなくこわいんだ。
小さい頃から、ズルしたり一方的にいじめたりするととんでもない怒りかたをする。
…いや、今私はズルもなにもしてないけどもっ!
でもいつも言いなりばかりはいやだ。
「どこへ行くのかちゃんと聞いてからじゃなくちゃ行きたくないっ乗らないっ」
こわかったけど、言うことは言わなくちゃ。
怒られるのを覚悟でそう言ってみた。
しんちゃんはじっと私を見つめてきて…私は思わず視線を反らした。
怒られるっ…と構えた私に、返ってきた言葉は意外なものだった。
「…どこへ行くのかなんて決めてねぇよ…」
しんちゃんはボソッとそう言った。