慟哭
……え?
決めてないって…
「…なんで?この前クリスマス空けとけって言うし、なにかあるのかと…」
私がそう言うと、しんちゃんは落ち込んだような困ったような顔をした。
「…寒いし冷えるだろ。とりあえず車暖めるから乗れよ。行きたくないならどこにもいかねえし」
そう言ってエンジンをかけた。
そうまで言われて乗らないわけにもいかないし…
とりあえず助手席に乗った。
エンジンをかけてくれたから車内に暖かい風がまわりはじめて、ちょっとほっとする。
ふとしんちゃんを見るとまだ外にいて、運転席のドアにもたれてタバコを吸っていた。
顔は見えないから、しんちゃんがなにを考えているのかわかんないけど…
さっきはしんちゃんらしくない顔してた。
行く先決めてないって、なんでだろ?
あんなに超ウルトラハイパー俺様な態度で今日のこと決めたくせに。
なんか…ホントにしんちゃんのことがわからない。
しんちゃんの背中を見つめていると、カチャッと音がした。
しんちゃん家のドアが開いたんだ。
中から出てきたのは、おばさん。
タバコを吸ってるしんちゃんに寄ってきて、とっても真剣な顔して何か言ってる。
しんちゃんはタバコを持ったまま、数秒固まって…何かおばさんに言った。
おばさんは、うーんと考えてる様子で…
しんちゃんに向かって怒ったような困ったような顔で何か言うと、ドアを開けて家の中に入っていった。
しんちゃんは…全然身動きしないでいた。
タバコがどんどん燃えて…
それでもしんちゃんは動かない。
タバコは燃え尽きて、フィルターの部分だけがしんちゃんの人差し指と中指に残されていた。
その時…私は自分が今この車に乗っていることに、すごく違和感を感じた。