慟哭



 ブォンッと車をふかして、俺様は雪の中走り去った。



 私は手の中に残った箱を見つめて、固まっていた。



 どうするかなーこれ…



 開けてみようか…でも、返すのに開けたらだめだよね。



 見てみたい気もするけど…



 でもどうしたらいいんだろ…これ。



 いつ返そうかな?



 次はいつしんちゃんに会えるかな。



 いつも車はないし、姿も見ないからなぁ…



 うーん、と考え込んでると、



「お前、んなとこで何してんの」



 頭の上から声がした。



 聞き覚えのある声に見上げると、



 しんちゃん家の二階の窓から話し掛けてきた、だいちゃんだった。



「…久しぶりだねーだいちゃん」



 固まっていたのがどれくらいの時間だったのかわからないけど、声が震えた。



「このクソ寒いのにそんなとこ突っ立って風邪ひきてーのか、お前」 



 …さすが兄弟、口の悪さがそっくりだ。



「…帰るとこだよ」



 体がぶるぶるっと震えた。声だけじゃなく。体が冷え切ってるんだ。



「じゃあね、だいちゃん」



「まてコラ」



 だいちゃんは少しイラついてるような口ぶりで言った。



「兄貴にもらったのか、ソレ」



 だいちゃんのいる部屋のなかは明るいから、私からは逆光で表情がわからない。



 何となくイラついてそうだなぁ。



「…もらったというか、返すつもりだから預かり物というか…」



 うだうだ答えてる私に、イライラゲージがあがったらしい。



「でけー声出せよテメー、聞こえねーだろっ」



 寒い中突っ立ってたから、声に力が入らないんだよっ



 …と言い返すこともできないくらい寒くて。



 とにかく一秒でも早く帰りたい。



「またね、だいちゃん。ばいばーい」



 聞こえてなくてもいいや…



 ひらひらっとだいちゃんに手を降って歩き出した。



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