慟哭
「おい、まてコラ」
…なんでこの兄弟はこうも俺様なんだろ。
「なに、もうアタシそーとー寒いから帰りた」
「女いんの知ってんのか」
…は?
「あいつ、女いるぞ」
…女?
女って、えっ女?彼女?
彼女…がいるってこと…?
え、だって…
呆然とする私にだいちゃんは、さらに言った。
「気をつけろよ。あいつに喰われんなよ」
くっ喰わ…っ?!
「ち、ちょっと!ねぇ、だいちゃん!」
私が呼びかけると、
「とっとと帰れ。風邪ひきてーのか」
…窓を閉めてしまった。
風邪ひきてーのかって二回いったよ…
いや、そうじゃなくて!
女いるぞって…しんちゃんに彼女がいるの?
じゃあなんで…?
…いったい何なの?どういうこと?
この、手の中の小さな箱。これはついさっきしんちゃんから…
それに…あの日、車でのことだって…大事にするって言ってた。
今日、雪の中を迎えに来てくれたことも…
どういう…こと?
手の中の小さな箱とまたにらめっこして…
あまりの寒さにぶるぶるって体が震え出したから
とりあえず、家までのあと数十メートルの距離を歩き出した。
頭の中はぐちゃぐちゃで
足の先が冷たくてジンジンしてて
なんかもう…泣きたい。
この時…閉めたはずの窓から、とぼとぼ歩く私をだいちゃんが見ていたなんて
私は知らなかった。