慟哭
図書館はやっぱりテスト前の学生であふれていて、涼しいけれどちっとも静かじゃない。
さっき珍しく(てか私は初めて聞いた)館内アナウンスが流れた。「静かにしましょう」って内容の。
夏休み中に起こったいろんなことを話すのに夢中なのは私たちだけではないらしい。
「でね、先輩の友達に会った時さぁ…」
…里美さん、テスト勉強は?
ま、里美の話はいつもおもしろくて、先々いろいろと参考になるだろうし、聞いていて飽きないからいいんだけど。
彼女、柏原 里美(カシハラサトミ)は、幼稚園からずっと仲良しで、大切な親友。
中2にしてすでに162センチもある身長をいかしてバスケ部に入った。2年生でレギュラーは里美だけだ。
髪はサラッサラのストレートでつやつやの漆黒。
色白で目がくりくり。睫毛がびっしり。まばたきしたら風がおこりそうなくらい。
どこからどうみても中2になんか見えない大人っぽい里美。彼氏のナントカ先輩も(何回聞いても覚えられない…)も背が高く、同じバスケの3年生でカッコイイ。男女問わず大人気な人。
見た目が大人っぽいくてクールな二人だけど、里美は私にとっては昔からかわらない、明るくて茶目っ気たっぷりなかわいい子だし、里美から聞く限りでは先輩もごくごくフツーの男子だった。
先輩は3年生なので部活はこの夏で引退で、最後の大きな大会と受験とでとても忙しかったらしく、夏休み中はあまり会えなかったとか。
これからも受験で塾だのなんだのであまり会えないらしい。
そのせいか、たまに会えたという時にはうれしそうに話を聞かせてくれる。
里美のうれしそうな顔を見ながら話を聞いていると、正直にうらやましいと思う。
うれしそうに語るときの里美はいつもより3割増しくらいで、さらにかわいい。
私にはまだわからない、恋をする、人を想う感情を知っている里美。
ま、それ以上の恋愛のイロハ的なものも知ってるけど。
今日も先輩の話を散々聞いていて、私たちはやっぱり勉強どころじゃなかった。