慟哭
図書館で里美と別れて、自転車置き場へ向かった。
サドルが太陽に照らされて熱くて、乗る気にならない。
カバンを前のカゴに乗せて自転車をひいて歩く。
…久しぶりに、回ってみようかな。
夏休み中はあの男の人を探してよく歩いて回ったこの公園。
あの日も暑かったし、今日もすごく暑かったけど…さすがに夕方になると、9月の夕方はちょっと違う涼しさをみせる。
…ここだったな。
おもちゃの飛行機が私のおでこに当たった場所。
大丈夫です、とかなんとか言えばいいものを、全く一言も発せずにいたんだっけ。
もう一度会えたら。
夏とは違う葉っぱの色、風、緑の匂い。容赦なく進む時間。
…帰ろう。
そううまくはいかないな。
たった一度会っただけでこんなにも気になるのはなんでだろう。
もう一度会えたら理由がわかるような気もしたんだけど。
いやいや、やるべきことは、来週からのテスト勉強。さっさと帰って勉強しないと。
それでもぐるっと一周まわってから自転車に乗って、公園を出た。
家と図書館のちょうど中間あたりにあるコンビニで、無くなりかけてたシャープペンの芯とジュースを買う。
公園をまわったせいか喉が渇いてた。
コンビニの駐車場で、家に到着するまえにジュースを飲む。
まだ外は十分明るいけど、陽はもう落ちかけてる。
夕焼けがとてもキレイで、思わずペットボトルをにぎりしめたままぼーっと見入っていた。
夕焼けの次の日は晴れるんだっけ。
明日もいい天気で暑くなるんだろうな、なんてボンヤリ考えていたとき。
目の前をスーツを着た、長身の影が通り過ぎた。
「あっ…!」
思わず声を上げた私を、
そのスーツの男の人が振り返る。
「お、利香じゃん」
私が呼び掛けたのは、しんちゃん。
平田 伸吾(シンゴ)、私の幼なじみだ。