僕等の怪談(1)
音楽室に近付くと歌声が聴こえてきた。
ガラガラ
遠藤が音楽室のドアを開けた。
音楽室の中は暗いけど真っ暗じゃない。
ぽぅっと青白い明かりがいくつも燈っている。
その青白い明かりの元には、笛やアコーデオンの楽器が独りでに演奏されてるんだ。
霊感が強くなったら演奏してる幽霊が見えるかもって期待半分、恐いもの見たさもあったんだけど、楽器しか見えない。
やっぱり楽器のお化けか。
「花子さ~ん。」
僕は静かな声で花子さんを呼んだ。
教壇の上で小刻みに踊ってたチョークと黒板消しが楽しそうに飛び跳ねだした。
「いるんだろ。体育館に行くんだ。置いてくぞ。」
遠藤にしては、頑張った誘い方なのかな。

花子さんは音楽室の後ろから真っ暗な暗闇にぽぅっと燈る青白い光を放って、机の上をすーっと宙に浮いたまま移動してきた。
その様子はいつもの花子さんとはまったく違っていた。
顔は顔面蒼白で能面みたいだし、全身から漂う妖気がオドロオドロしい。
怖ぇ~
これ以上近付いたら叫んで逃げ出すと思った。
花子さんは可愛いと思ってたけど、やっぱり幽霊なんだ。
絶対にヤバイ。
怖すぎる。
僕の緊張を打ち破ったのは遠藤だった。
「行きたくないなら置いてくぞ。」
遠藤は怖くないみたいだ。
あれ?あの緊張も消えてる。
「付いて来て欲しいなら、そう言いなさいよ。」
目の前にいる花子さんは、いつもの花子さんだった。
花子さんはちょっと驚いた顔をして、それからちょっと笑ったみたいに見えた。
でも直ぐにそっぽを向いちゃったから気のせい?
「一諸に行こう。君がいないと何していいか分からないよ。」
淳は花子さんに手を差し出した。
花子さんは振り向いて、にっこり最高な笑顔を見せた。
「最初からそう言えばいいのよ。」
そう言って花子さんは淳の手を取る真似をして、僕達の目線まで降りてきた。
それから軽く僕にウインクした。

< 25 / 61 >

この作品をシェア

pagetop