僕等の怪談(1)
「今は行かない。」
遠藤が静かな声で答えた。
「何だよ。やっぱりお前も怖いんじゃないか。」
淳が得意げにあごを突き出した。
「バカだな。こんな昼間に行ってどうするんだよ?犯人が行動するのは夜だ。」
遠藤は大好きなおもちゃでも手に入れたみたいに声を弾ませた。
「何言って。」
淳は言葉が続かない。
「夜に行くなんて嫌だよ。それに、それに、夜学校に行くなんて親が許してくれないよ。」
僕の声は震えを通り越して悲鳴に近かったと思う。
「何だよ。お前達だって原因を知りたいだろ?淳お前、犯人にからかわれたのかもしれないんだぜ。」
「行くよ。」
淳が両手を握りしめながら答えた。
そして僕は目をつぶって首をうなだれるしかなかった。
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