僕等の怪談(1)
「あれ何?」
体育館の中央に立ち上ってくる黒くて暗い何か。
ゴゴゴゴゴッと聞こえてくる地響きのような・・・呻き声?
いや、これが声である筈がない。
だってあれが生前は生きてたなんてありえない。
僕達は声にならない叫び声をあげていた。
もしかしたら僕達は無意識のうちに、何処かへ消えてしまった花子さんを呼んでいたのかもしれない。
「この野郎っ」
遠藤が手に持っていた浄めの塩を投げつけた。
それは真っ暗で真っ黒な念のような者に飲み込まれた。
「ゴッゴッゴッ」
よく分からないけど苦しがってるみたいだ。
だって巨大で真っ黒な何かが分散して分かれていってる。
「よし、残りの塩も投げつけろ。」
遠藤が言い終わるより早く僕は浄めの塩を巾着から出して、叩きつけるみたいに真っ黒な何かにぶつけた。
「ゴーッ」
真っ黒で真っ暗な念が怒ってるみたいだ。
それから真っ黒で真っ暗な念らしきものが、分散して何か形を取り始めた。
懐中電灯をあてなくても見えてきたのは暗闇に目が慣れてきたせいかもしれない。
「うわあっ」
目の前の真っ暗だった念が大勢の人・・・いや、幽霊に変わっていく。
「ゴクリッ」
僕達はまるで足が地面に根を生やしたみたいに、逃げる事も立ち向かう事も出来ないでいた。
「あれ何?」
僕は恐怖の為に目が離せなくなっていた。
「落ち武者だ。」
淳の言葉でぼやけていた輪郭をはっきり確認出来るようになった。
「何であんなにいっぱい」
< 30 / 61 >

この作品をシェア

pagetop