僕等の怪談(1)
僕達は裏門から学校の中に入り音楽室に向かった。
「うわ~夜の学校って薄気味悪りぃな。」
遠藤は手提げバックから懐中電灯を出して辺りを照らした。
真っ暗な廊下や階段に懐中電灯の明かりがあたると、その境が余計に不安をかきたてる。
薄明かりから外れた暗闇から何かが見ていて今にも襲ってくるんじゃないかと。
目の前の階段を上って3階の廊下の1番奥が音楽室になっている。
遠藤を先頭に淳と僕も階段を上って3階にたどり着いたその時、微かに声が聞こえてきた。
僕達3人は息をのんでお互いの顔を見回した。
ずっと強がっていた遠藤の目は恐怖で見開かれている。
淳も何かを話したいのに歯と歯がガタガタとぶつかって言葉に出来ない。
僕はと言えば、自分の顔が自分では見えない事に感謝した。
「どうしよう。」
遠藤らしくない言葉に僕は息をのみこんだ。
「ほらこの声だよ。音楽室から聞こえてくる。」
淳は自分は間違ってないと主張したいみたいだけど、こんな事が今正しくて何が嬉しいんだ。
「あの、淳君が言ってたのが本当だって分かったから、あのもう帰ろうよ。」
「ダメだ。ここまで来て帰れるもんか。俺達は3人いるんだから、一諸に行けば大丈夫。」
遠藤は両手の拳を握りしめて勇気を振り絞っているみたいだ。
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