僕等の怪談(1)
足に絡み付き、前に突き進むのを止めようとするモノがある。
それとも前に進む事を拒む自分の意志が、絡み付いているのか?
「はあ、はあ、はあ」
普段なら簡単に駆け上れる距離が遠く感じる。
一段一段上る度に冷や汗が流れた。
緊張の糸が張り詰めて、もう少しで吐きそうだ。と思ったその瞬間に僕は歩みを止めた。
「待って、行かないで。」
僕は必死で目の前を行く2人を呼び止めた。
いや、呼び止めたつもりだった。
声が出ていない。
ぐいっ
2人の腕を掴んだまま歩みが止まって、僕が2人の腕を引っぱる形となった。
「なんだ?」
「どうした?」
2人が同時に振り返る。
「ひっ」
2人の顔を見れば分かる。
僕の身体に絡み付くモノの正体。
肩から鎖骨、胸へと伸ばされる細い腕。
絡み付くべっとりした黒髪。
ザワリッ
背中を走る悪寒は産まれて初めて味わう強烈なものだった。
「助けて」
その一言が口に出来ない。
2人の腕を掴んでいた手が振りほどかれた。
置いていかれる。
その時の絶望感は、どう言い表せばいいのだろう。
鉛を流し込まれたように胃が重くて、まるでそこに心臓があるみたいに脈を打っていく。
手足の先が冷たく凍りつく。
それとも前に進む事を拒む自分の意志が、絡み付いているのか?
「はあ、はあ、はあ」
普段なら簡単に駆け上れる距離が遠く感じる。
一段一段上る度に冷や汗が流れた。
緊張の糸が張り詰めて、もう少しで吐きそうだ。と思ったその瞬間に僕は歩みを止めた。
「待って、行かないで。」
僕は必死で目の前を行く2人を呼び止めた。
いや、呼び止めたつもりだった。
声が出ていない。
ぐいっ
2人の腕を掴んだまま歩みが止まって、僕が2人の腕を引っぱる形となった。
「なんだ?」
「どうした?」
2人が同時に振り返る。
「ひっ」
2人の顔を見れば分かる。
僕の身体に絡み付くモノの正体。
肩から鎖骨、胸へと伸ばされる細い腕。
絡み付くべっとりした黒髪。
ザワリッ
背中を走る悪寒は産まれて初めて味わう強烈なものだった。
「助けて」
その一言が口に出来ない。
2人の腕を掴んでいた手が振りほどかれた。
置いていかれる。
その時の絶望感は、どう言い表せばいいのだろう。
鉛を流し込まれたように胃が重くて、まるでそこに心臓があるみたいに脈を打っていく。
手足の先が冷たく凍りつく。