誓い
ところが、彼女は強かった。

悩む父親とは対照的に、
『産む』の一点張り。

『だってせっかく授かったのよ?
しかも2人も。
こんな奇跡、またあるか
どうかなんて解らないわ。
産まれてくる子供たちが
この先どうなるかなんて、
産まれてから
考えればいいじゃない。
父さんたちなら
私が説得するし、大丈夫よ。
私は産みたいの。産ませて。』

そう、強い目をして言ったのだ。

綺麗な瞳だった。

真っ直ぐ前だけを見つめて、
自分が死ぬかもしれない
恐怖なんて、感じられなかった。

本当は恐怖だらけだったろうに。

父親は彼女の強い気持ちと
言葉に押されて、
大学を辞めて就職し、
彼女と結婚。

実家からは勘当されて
しまったけれど、
彼は幸せだったという。
< 119 / 125 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop