引き金引いてサヨウナラ


カバンに教科書を詰め終えると、叶が美菜の席に来た。


「一緒に帰ってもいいかな?」


叶の申し出に美菜はちょっとためらったあと、コクンと頷いた。


担任の話を聞いてからひとりで帰るには、勇気がいる。


弘や晴香も方向は同じだが、弘は晴香の元へ向かったらしいと見当がつく。


叶は気を利かせたのだろう。


朝からずっと、叶に対して少しだけ気まずさがあるけれど、無視したいわけじゃないから、いい機会かもしれないと思った。


外に出ると、なにもかもが嘘のように晴れていた。


それでもどこか、心を寒々とさせる空から、美菜は目をそらした。


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