引き金引いてサヨウナラ
叶と昨日歩いたばかりの道なのに、また色彩が変わっているように美菜は感じた。
あんなに毛嫌いしていた田舎の風景が、なんだかとても大切なものに見えてくる。
どこまでも続く田畑に、ショッピングモールでも出来てくれたらマシにもなるのに、なんて思ったこともあった。
でも今は、このまま変わって欲しくない。
もし変わってしまっても、この町らしさを残していて欲しい。
理不尽な力で、無くされないで欲しい。
そして、美菜の心のわだかまりが、どこからきたものか理解した。
――叶は、東京の人だから……
叶が、例えどんなにこの町が好きであろうと。
この景色が例え消え失せてしまっても、叶には帰る場所がある。
叶が本来いるべきところは、ここじゃない――
自分でも気付かないうちに、心のどこかでそう思っていたのかもしれない、と美菜は感じた。