引き金引いてサヨウナラ
美菜は、一番気になっていたことを訊くことにした。
口にしたら現実になりそうで怖かった言葉を、論理的に否定して欲しくて、恐る恐る尋ねた。
「戦争になるのかな……?」
達也は箸を止め、真剣な眼差しで美菜を見つめる。
美菜が視線と沈黙に耐えきれなくなった時、達也がやっと口を開いた。
「日本は、戦争の放棄をしているんだ。戦力の不保持も明言している。美菜も学校で習っただろう?
中学生だったかな」
「小学校で習うよ」
「そうか。……だから戦争になることは、ない」
達也の言葉に、達也自身が納得していないような様子だった。自らに言い聞かせるような言い方だ。
美菜はそれに気付かないふりをしながら、それでも気になる質問を続けた。
「自衛隊は?
防衛はするってニュースでいってた」
それならば実質的には戦争になるのではないか?
「実際は、また弾道ミサイルのようなものが飛んできたら、迎撃はすることになるだろうね。
ただ、弾道ミサイルは迎撃しにくいんだ。
それでなくても日本は戦力不保持を謳ってるから、迎撃する設備が……」
達也がそう言った瞬間、つけっぱなしにしていたニュースが騒がしくなった。