引き金引いてサヨウナラ
湯船に浸かりながら、ケータイのワンセグでさっきのドラマの続きを見る。
柚江にはやめなさいと叱られるが、そもそもワンセグとはこういうもののためについてると美菜は思っていたから、こっそりと持ち込んでは観ていた。
途中ずいぶん見逃してしまったけれど、ドラマがなんの進展もなかったおかげで、話がわからなくなる事はなかった。
エンディング曲が全て流れ終わって次回予告をみたのち、美菜はまた溜め息をついてワンセグを切った。
つまらないドラマだったけれど、とりあえずこれで明日の会話はついていける。
――ちょっと長く浸かり過ぎたかな――
美菜はケータイを閉じ、体を洗ってお風呂から上がった。
脱衣場で髪をふき、部屋へ戻る前に居間へ声を掛ける。
「お風呂上がったよ」
達也が小さく唸ったのをきき、美菜は階段を上っていった。
1日の中で、達也へ掛ける言葉は毎日それだけ。