引き金引いてサヨウナラ
いつからこんな風に、お父さんと話さなくなったんだろう――
部屋に入り、美菜はふとそう思った。
小さい頃は、母親が呆れるくらい、父親っ子だったのに――
幼い頃は、忙しい朝の時間に少しでも達也のそばにいたくて、美菜はよく足に絡みついていた。
達也もそんな美菜を可愛がり、常に何かしら話し掛け、目をかけていた。
そんな二人の仲睦まじさに、柚江はいつも目を細めて朝食を並べていたのだ。
ただ、夕飯は美菜だけが早くて、美菜が寝静まった頃に達也は仕事から帰ってきていた。
たまに美菜が物音や気配で目を覚ますと、暗闇のなか、達也がいつも美菜の頭を優しく撫でてくれていた。
そして美菜は安心してまた眠りについていたのだった。
それを思い出しても、美菜はやっぱり父親の後にお風呂に入るのは嫌だと思ったし、洗濯物も一緒に洗われるのは嫌だった。