引き金引いてサヨウナラ
都会の喧騒が全く聞こえてこない、山間部の小さな集落。
そこが有坂 美菜の生まれ育った故郷だった。
聞こえてくるのは、川のせせらぎ、風の通り抜ける音、草木のざわめき。
遠くに目をやれば、緑々とした山の裾野が伸びて、見渡す限りに田畑が広がっている。
高い建物なんては、田畑の合間にぽつぽつと佇む鉄塔くらい。
小中高と、かろうじて学校は揃っているものの、クラスも少なく顔ぶれにほぼ変わりがないような、本当に小さな学校だ。
駅もバス停もあるけれど、一時間に一本あればいい方で、朝夕の通勤通学時に少し本数が増える程度。
駅前の寂れた商店街は、今時コンビニすらなくて、この町だけが時代に取り残されたんじゃないかという、錯覚にすら陥りそうになる。
美菜は小さく溜め息をついた。
こんな田舎、出て行ってやる――
それがここ最近の、彼女の口癖だった。