引き金引いてサヨウナラ


「美菜」


不意に美菜の後ろから手が伸びてきて、彼女の肩を叩いた。


突然のことにぴくんと肩が小さく跳ねたけど、聞きしんだ声と、振り返った目に入ってきた顔を見て、美菜は表情を和らげた。


「弘……」


声を掛けてきたのは、この町の中で、美菜が関心を寄せているものの一つ。


クラスメイトの芝 弘だ。


短い黒髪に、浅黒い肌。


爽やかな笑顔から覗くのは、歯磨きのCMにでも採用されそうな白い歯。


程良くついた筋肉は、長いはずの手足を、少しだけ縮めて印象付けていた。


典型的体育会系の男の子。


通っている高校での部活動は、多くない生徒数を如実に表していて、野球とバスケとサッカーだけだが、弘は 所属していた。


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