引き金引いてサヨウナラ
弘は美菜の隣に並び、ともに歩き始めた。
「どーした? つまらなそうな顔をして」
「つまらなそう、じゃなくて、つまらないの」
美菜は、冷たい口調で弘に言った。
小さな集落で共に育ってきた友人だ。今更、取り繕う必要もない。
美菜が弘に関心を寄せているのは、こうやって冷たくあしらっても、犬のようにじゃれついてくるから。
それがわかっているから、ああいう態度がとれるのだ。
かといって、自分に好意を寄せているわけではないとは知っている。
弘には、同学年に晴香という、れっきとした彼女がいる。
晴香は美菜の友人でもある。
そして美菜は、二人を羨ましいと思っていた。
自分にもそんな存在がいれば、この町もきっと輝くのに……
美菜は弘を見ながら、そんなことをぼんやりと考えていた。
出て行かない一番の理由、それは。
美菜には、一人で出て行くだけの勇気がないことだった。