引き金引いてサヨウナラ
第三章
翌日には案の定、美菜と叶の噂が広まっていた。
美菜が学校へ向かう間も、道行く生徒たちがチラチラと自分を見ているのが、気のせいでも被害妄想でもなくわかる。
通学路に並ぶ民家に住む顔見知りのおじさんおばさんには、『春らしく、美菜ちゃんにも春がきたねぇ』なんて言われながらの登校になった。
いちいち否定したり訂正するだけ無駄なのは、とうにわかりきっている。
適当に愛想笑いしながらも、肯定だけは決してせずに、通り過ごした。
この田舎町のことを何も知らない叶は、転校初日から道行く人に見られる境遇をどう思っただろうか、と美菜は溜め息をつく。
しかし案外『このあたりでは見ない顔だと思われてるのか?』くらいにしか感じていないかもしれない。
そうだったらいいと思いつつも、違う気持ちもほんのり湧き上がっていた。