引き金引いてサヨウナラ
なんと言葉を掛けたらよいのかわからず、美菜は複雑な顔で晴哉を見ていた。
そして、なんとなくいたたまれなくなり、美菜がチラリと晴香に視線をやると、晴香は「戻らなくて平気?」と言葉を掛けて寄越した。
美菜はその言葉を機に、一度両親の元へ戻ることにした。
「何かあったら……」
そこまで言い、家にケータイを忘れたことに気付く。
しかし美菜は、そのうち直ぐに家に戻れるだろうと考え、言いかけた言葉を引っ込めた。
きっとまたすぐいつもの日常に戻る。
ミサイルに不安を感じながらも誰しもそう思い、どこか他人事のように感じていた。
美菜は晴香たちに手を振り、その場を離れる。
東京にいれば、叶はこんな恐ろしさを感じなかったろうに、とぼんやりと考えながら。