引き金引いてサヨウナラ
美菜が両親の元へ戻ると、柚江が心細そうに立ちすくんでいた。
美菜とほぼ同時に達也が戻り、そんな柚江を安心させた。
額に手をやり難しい顔をしている達也に、柚江は訝しげな目を向けた。
「あなた?」
あぁ、と溜め息混じりの唸り声を出した達也は、心ここにあらずの様子で、また柚江の不安をあおる。
そんな柚江の視線に気付く様子もなく、達也は美菜に顔を向けた。
「美菜の友達に、ヤマト重工に勤めてるお父さんがいたな?」
突然振られた話題に、美菜は一瞬質問の意図がわからず、口を開けても言葉が出てこなかった。
「え、……うん。晴香のお父さんでしょ?
さっきそう言ったじゃない」
少しトゲのある美菜の言葉に、達也は一瞬表情を曇らせたが、すぐにそれを消し去った。