引き金引いてサヨウナラ


美菜が「それがどうかしたの?」ときいても、達也は何か考え込んでいる様子で、生半可な返事しか返ってこない。


美菜と柚江は顔を見合わせた。



そのうちテントの方から、何か話しかけるような声が聞こえて来た。


拡声器を使うことで、独特にひび割れくぐもった声。


上擦った調子で、音を途切らせつつ、何かを喋っている。


テントから少ししか離れていないのに、間の人の声にかき消されてしまい、内容がよく聞き取れない。


かろうじて聞き取れたのは『自宅に戻っていい』というものだった。


大丈夫という保証も確信もないのだろうが、当面の危機は去ったと考えられる、ということなのだろう。


気の早いものはもう小学校を出ている。


美菜は達也を見て、帰るタイミングをはかっていた。


< 97 / 221 >

この作品をシェア

pagetop