引き金引いてサヨウナラ
美菜が「それがどうかしたの?」ときいても、達也は何か考え込んでいる様子で、生半可な返事しか返ってこない。
美菜と柚江は顔を見合わせた。
そのうちテントの方から、何か話しかけるような声が聞こえて来た。
拡声器を使うことで、独特にひび割れくぐもった声。
上擦った調子で、音を途切らせつつ、何かを喋っている。
テントから少ししか離れていないのに、間の人の声にかき消されてしまい、内容がよく聞き取れない。
かろうじて聞き取れたのは『自宅に戻っていい』というものだった。
大丈夫という保証も確信もないのだろうが、当面の危機は去ったと考えられる、ということなのだろう。
気の早いものはもう小学校を出ている。
美菜は達也を見て、帰るタイミングをはかっていた。