引き金引いてサヨウナラ
「帰んないの?」
小学校が閑散とし始めた頃、達也に向かってイライラとした様子で、美菜は言った。
家に帰るのが果たして良いことなのかはわからない。
だが、ここにいたって安全かはわからないし、みんな帰ってるならば、帰れるうちに帰ったほうが良いのじゃないかと美菜は思っていた。
小学校の時計を見れば、時刻はいつの間にか午前7時。
サイレンをきいてからまだ大して時間が経っていない。けれど、短針が一回り以上したのじゃないかと思ってしまうほど、長い時間をここで過ごしたような気もした。
そろそろ準備をしないと、達也は会社に、美菜は学校に、遅刻してしまう。
「あ、あぁそうだな。帰ろうか」
ぼんやりとしていた達也が、美菜の言葉で気付いたことに、美菜は心の中で愚痴た。
頼りないんだから――
美菜は溜め息をつき、黙って達也と柚江のあとをついて歩いた。