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初めてのバレンタイン
小学校5年生のバレンタイン。
勇気を出して、涼くんの家へ。
鳴らしました、チャイムを。
・・・・・・ピンポーン
初めてでした。
あなたも覚えていますか――
震えるようなあのドキドキ。
何も話せないまま、チョコだけ渡して走って家に帰った。
顔が熱くて、手の震えがなかなか止まらなかった。
そして、ホワイトデー。
友達に冷やかされながら私の家の前に現れた涼くんは、真っ赤な顔で鼻を触っていた。
大好きな仕草。
「これ・・・・・・」
そう言って、赤いチェックの包装紙に包まれたビンに入ったクッキーをくれたんだ。
それから、
一日一枚ずつ、そのクッキーを食べた。
忘れもしないココア味。
1ヶ月以上もなくなることのなかったクッキー。
最後の一枚をずっと食べることができなかった。
そのビンは
今でもまだ捨てられない。
小学校5年生は、子供じゃないんだよ。
しっかり相手を見る目や、『好き』って気持ちを持ってる。
あのクッキーの味を忘れることは永遠にない。