71




私のいじめられてる期間はどれくらいだったのか、今では忘れてしまった。






きっと、そんなに長くはなかったはずだけど。




すごく長かった。



本当に、長く感じた。




1日も長かった。



10分の休憩も長かった。




休み時間になると、誰もいない荷物置き場のような階段にいつも一人で逃げ込んだ。




そこに、一人で座って、10分の長さを感じていた。




友達と話しているとあっという間の10分が、一人でいるとこんなにも長く苦しい。








ピンチになったときほど、人の気持ちってわかるんだ。





元気な時に親切にしてくれた人より、苦しい時に親切にしてくれた人の方が一生忘れられない。





音楽の先生が、抱きしめてくれた。




毎朝、こっそり先生を待っていた。




その時期、『おはよう』を言える人が同じクラスの友達の中にいなかった。


その先生だけだった。



なんとなくお母さんの匂いがした。




お母さんが学校にいるような安心感。





あの音楽の先生がいなかったら、学校を休んでいたかもしれない。






家に帰ると、玄関の外にお母さんがいてくれた。





やっぱり、鍵っ子は寂しいだろうなって思う。



私の場合、学校でどんなに辛くても家の近くまで来ると走って家を目指した。





角を曲がると、きっとお母さんが待ってる。



それがどれほど嬉しかったか。






< 16 / 71 >

この作品をシェア

pagetop