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ファーストキス
窓の外からの薄暗い街灯の光だけ。
それなのに
ハッキリと見える涼くんの顔。
「もう、帰らなあかんな。明日も学校あるし。帰っていい?」
汗ばんだ手から緊張が伝わる。
「まだ、帰ったらいやや・・・・・・」
私は消えそうな小さな声を出す。
部活を終えたその足で私の家に来てくれた涼くん。
制服を着ていた。
私の高校はブレザーだけど、涼くんの高校は黒の学ラン。
前のボタンを外していた。
「でも、もう11時やで。なぁ、俺、・・・・・・帰ってもいい?」
少し甘えたような声で涼くんが顔を近づける。
「あかんて。このまま帰るなんて・・・・・・」
ソファに寄り添いながら、時間だけが過ぎた。
ファーストキスの予感を感じてから、もうこんな会話を何度繰り返しただろう。
頬に触れた唇の感触を忘れてしまう程、時計の針は進んでいた。
頬にキスをしてくれてから、1時間半。
ファーストキスが
こんなにも大変だとは知らなかった。
その主導権を握らなくてはいけない男の子って・・・・・・本当に大変。